決算整理仕訳

決算整理仕訳の多くは、適正な期間損益計算を行うために行われます。なぜ、決算し整理仕訳が必要なのか、適正な期間損益計算の観点から理解すると、決算整理仕訳の意味を理解する事ができます。決算整理仕訳には色々な仕訳がありますので、このコンテンツでは決算整理仕訳の代表的なものについて概要的に学びます。

主な決算処理と決算整理仕訳

決算処理と決算整理仕訳には色々ありますが、このコンテンツでは代表的な下記の事項について概要的に学びます。

  • 費用と収益の見越繰延(みこしくりのべ)
  • 減価償却
  • 引当金の計上

費用と収益の見越繰延

当期に費用や収益の発生要因があっても、収入や支出が無い場合があります。これらをあらかじめ見越して当期の費用や収益にすることを”見越(みこし)”といいます。反対に当期に費用や収益が発生する要因がなくても、収入や支出がある場合があります。これらを適正な期間の費用や収益に繰り延べる事を”繰延(くりのべ)”といいます。

【見越の例】

決算に際し、借入金に係る当期分の利息の未払い分2,000円を見越し計上した。

【仕訳】

(借方)支払利息 2,000円 / (貸方)未払利息 2,000円

支払利息は費用の勘定科目です。未払利息は負債の勘定科目です。

 

【繰延の例】

2XX1年の年初に火災保険料5年分60,000円を現金で一括して支払った。

【支払時の仕訳】

(借方)保険料 60,000円 / (貸方)現金 60,000円

保険料は費用の勘定科目です。現金は資産の勘定科目です。

 

【1年目の決算】

(借方)前払費用 48,000円 / (貸方)保険料 48,000円

保険料は費用の勘定科目です。前払費用は資産の勘定科目です。支払時に5年分の費用を計上していますので、1年目の決算時に残りの4年分を前払費用として資産計上して費用処理を繰延べます。

 

【2年目の以降の決算】

(借方)保険料 12,000円 / (貸方)前払費用 12,000円

1年目の決算時に残りの4年分を前払費用として資産計上して費用処理を繰延べていますので、2年目以降ではそれを取り崩して費用処理して行きます。そうする事で保険料を保管期間に按分する事ができ、適正な期間損益計算が行えます。 

減価償却

減価償却(げんかしょうきゃく)とは適正な期間損益計算のため、固定資産を取得するのに要した金額をその使用期間に渡り費用として按分することです。例えば、36億円の自社ビルを建てたとして、30年間使用する予定であれば、ビルを建てた時に36億円費用処理してしいまうと、その年だけ利益が大きく減少し適正な損益計算とは言えなくなってしまいます。適正な損益計算をするのであれば、毎年1億2千万円づつ費用処理していく方が適正な損益計算と言えるのではないでしょうか?

何をもって"適正"かというのは、色々な考え方があり、実際いくつかの計算方法があります。そしていくつかある計算方法の中から、選択する事ができます。

【減価償却の例】

2XX1年初頭にiDempiere用のサーバー32万円を現金で購入した。5年間使用する想定で、5年後の価値は2万円と見積もっている。

【資産の取得時】

(借方)備品 320,000円 / (貸方)現金 320,000円

備品と資産は両方とも資産の勘定科目です。現金(資産)が減った分、備品(資産)が増えます。

【費用処理(直接控除法)】

(借方)減価償却費 60,000円 / (貸方)備品 60,000円

適正な期間損益計算の観点により、毎年上記の仕訳を起こします。そうすると5年使用した後には、備品として2万円の残る事になります。この仕訳は、直接備品の残高を減らして行きますので、直接控除法と呼ばれる仕訳になります。高額な固定資産の場合、取得に要した金額を把握できるようにする事は意味がある事とされており、直接減価償却費を資産から控除しないようにする、間接控除法という仕訳方法もあます。

【費用処理(間接控除法)】

(借方)減価償却費 60,000円 / (貸方)減価償却累計額 60,000円

財務会計では間接控除法で財務諸表上では表示する事とされています。

 

耐用年数とは

長期間にわたり使用する事が前提で購入される資産を”固定資産”といい、多くの固定資産は、その使用期間(耐用年数)で、費用を按分します。耐用年数税会計的には法人税法において資産の種類毎に細かく決められています。しかし会計理論的には、資産を使用する企業が各々の裁量で決める事ができます。会計理論的には、企業が決められる耐用年数ですが、法人税の規定と異なる耐用年数にしてしまうと減価償却を法人税の計算用と会計理論用とで2重管理しないといけないため、日本では法人税の規定の通りに財務会計でも管理会計でも減価償却を行うケースがとても多いです。

 

減価償却費の計算方法

減価償却費の計算方法は、より適切な期間損益計算を行えるようにするため、「定額法」、「定率法」、「級数法」、「生産高比例法」などいくつかある計算方法の中から企業が選択できるようになっています。

定額法の減価償却費の計算式

(取得原価 ‐ 残存価格)÷ 耐用年数 = 減価償却費

定率法の減価償却費の計算式

(取得原価 ‐ 減価償却累計額)× 償却率 = 減価償却費

引当金の計上

引当金とは、将来の費用・損失を当期の費用・損失としてあらかじめ見越計上した時の貸方科目と会計理論的には定義されています。要するに、将来的に費用が発生する事が確実であり、その要因が当期にあり、その費用を合理的に見積もれるのであれば、引当金として見越し計上しておこうという事です。引当金には、貸倒引当金や賞与引当金、修繕引当金などいくつかあります。

引当金の計上要件

  • 将来の特定の費用または損失であること。
  • その発生が当期以前の事象に起因すること。
  • 発生の可能性が高いこと。
  • その金額を合理的に見積もることができること。

引当金の例

貸倒引当金(かしだおれひきあてきん)

当期の債権で、翌期以降に回収不能になる分をあらかじめ見越して費用計上しておきます。

【仕訳(費用計上時)】

(借方)貸倒引当金繰入額 XXX円 / (貸方)貸倒引当金 XXX円

貸倒引当金繰入額は費用の勘定科目です。貸倒引当金は負債の勘定科目です。

【仕訳(貸倒時)】

(借方)貸倒引当金 XXX円 / (貸方)売掛金 XXX円

売掛金は資産の勘定科目です。貸倒引当金繰入額として既に費用処理していますので、実際に貸し倒れが発生した時には費用処理せずじ貸倒引当金(負債)の残高を減少させ、その分債権である売掛金(資産)の残高を減少させます。

 

賞与引当金(しょうよひきあてきん)

来期以降に支払う賞与の要員が当期にある場合で、その分を費用としてあらかじめ見越して費用計上しておきます。例えば日本では、6月から7月にかけて夏の賞与が慣習的に支払われますが、それは前期の10月~3月における業績に起因しているケースがほとんどです。そのような場合、賞与引当金として10月~3月が属する会計期間に費用計上しておきます。

【仕訳(費用計上時)】

(借方)賞与引当金繰入額 XXX円 / (貸方)賞与引当金 XXX円

賞与引当金繰入額は費用の勘定科目です。賞与引当金は負債の勘定科目です。

【仕訳(賞与支払時)】

(借方)賞与引当金 XXX円 / (貸方)現金 XXX円

賞与引当金繰入額として既に費用処理していますので、賞与を支払った時には、支払った現金(資産)の分、賞与引当金(負債)を減らします。

 

修繕引当金(しゅうぜんひきあてきん)

自社ビルなど使用期間が長くなると、修理の期間が増えて、使用する期間の後期になればなるほど一般的に修繕費が増えて行きます。しかしながら修理しないといけなくなった要因は、長年使っているからであり、適正な期間損益の観点から考えると、支出した時に全額費用計上するのは好ましくないと考えます。実際に修理は行っていなくても、修正しないといけない要員を作った各会計年度に修繕引当金としてあらかじめ費用計上しておくことで、より適正な期間損益計算ができると考えられます。

【仕訳(費用計上時)】

(借方)修繕引当金繰入額 XXX円 / (貸方)修繕引当金 XXX円

修繕引当金繰入額は費用の勘定科目です。修繕引当金は負債の勘定科目です。

【仕訳(修繕時)】

(借方)修繕引当金 XXX円 / (貸方)現金 XXX円

修繕引当金繰入額として、修理の要因を作った各会計年度に既に費用処理していますので、修理を実際に行った際には、支払った現金(資産)の分、修繕引当金(負債)を減らします。